当事者らで作る団体は数千万円を短期間で使ったとしても「驚きはない」と話しています。
山口県阿武町で、新型コロナ関連の給付金4630万円を誤って24歳男性の口座に振り込んだ問題。
男性が「振り込まれた金は海外のオンラインカジノで全部使い切った」と話しているとNHKなどが報道すると、SNS上で大きな注目が集まった。
聞き慣れない「オンラインカジノ」だが、公益社団法人「ギャンブル依存症問題を考える会」の調査では依存する人が急増しているという。代表の田中紀子さんは「際限なく続けられてしまい、のめり込むまでのスピードが速い」と指摘する。
同会が主催する相談会に訪れたギャンブル依存症者の家族に対するアンケート調査で、当事者がはまっているギャンブルの種類を複数回答で聞いたところ、「オンラインカジノ」「インターネットカジノ」は2020年では全体の3%台だったが、2021年は7%台に増加。
最も多い回答はパチンコ・パチスロだが、コロナ禍の影響もあり、アプリで投票できる公営競技に加えてオンラインカジノの問題が広がっているという。
テレ朝newsによると、オンラインカジノはギャンブルが合法な海外の政府から正式なライセンスを受けた企業が運営。クレジットカードや仮想通貨などで入金し、スロットマシンやルーレットなどをネット上でプレーできるという。
ギャンブル依存という視点から見た、オンラインカジノの大きな特徴は何か。それは「他のギャンブルと違って24時間できてしまうこと」と田中さんは指摘する。
「脳が興奮状態になり、寝ないでずっとやり続けてしまう。なので他のギャンブルよりも依存するまでがすごく速いし、寝ないでやることで鬱状態になる人も多いと感じます」という。
オンラインカジノに数千万でも「驚きはない」
阿武町の男性のケースに関して、SNSでは「こんなに短期間で4630万円もオンラインカジノには使えないだろう」という声も上がった。
男性に振り込まれたお金が実際にどうなったのかは、まだ明らかになっていない。
その上で、ギャンブル依存の当事者団体の立場で考えると、4600万円という大金を短期間でオンラインカジノで使うということ自体に「驚きはない。もっと使ってしまう人もいます」と田中さんは話す。
「オンラインカジノは、1回に入金する金額の上限があっても、回数の上限はないところがほとんど。いくらでもできてしまうシステムになっているんです」
田中さんによると、オンラインカジノの広告がSNSに流れていることも多く、若者が誘い込まれている状況があり、「(広告を流すプラットフォームの)事業者の意識も低いと感じます」。
既存の法律ではオンラインでのギャンブルを想定した規制がないこと、当事者や家族に対する支援策も広がらないことにも危機感を募らせているという。
ギャンブルにのめり込む「背景」は
男性は5月18日、誤送金されたと知りながら使ったとして、電子計算機使用詐欺容疑で逮捕された。
動機や実際にお金がどうなったかは明らかになっておらず、ギャンブルが関わっていたとしても、犯罪が許されるわけではない。
ただ田中さんは、オンラインカジノなどギャンブル全般に関わるトラブルが起きた際、のめり込んだ背景にも目を向ける必要があると訴える。
「ギャンブルにのめり込む人は、生きづらさを抱えている人が多い。それを紛らわすためにギャンブルに依存していく、という傾向があります」
「『ギャンブル依存症』という診断がついていてもいなくても、『やめたい』と思っているのにやめられない、ギャンブルで生きづらさを紛らわそうとしている人に対しては支援が届いてほしいし、助けてあげたいと思います」
もし周囲にギャンブルに関する問題を抱える人がいた場合、民間の支援団体や当事者団体に繋がり、同じ経験をした人と話をする機会を持つことが重要だとしている。